
無電解ニッケルメッキは、電子部品や精密部品、自動車部品などでよく使われる表面処理方法です。
無電解ニッケルメッキを扱う中で、時折電解ニッケルメッキと混同されるお客様をお見かけします。
よく似た名前で同じニッケルメッキですので、似たようなものに感じるのもよくわかりますが、この二つはさまざまな違いがあります。
本記事では、電解ニッケルメッキと無電解ニッケルメッキの違いをイラストを交えてご説明し、あらためて無電解ニッケルメッキの特徴や用途をご紹介します。
1.ニッケルメッキとは
ニッケルメッキは表面に光沢のある綺麗なメッキです。
元来、ニッケルという金属は耐食性の高いものであることから、ニッケルメッキは耐食性向上などに利用される表面処理方法です。
このニッケルメッキは、大きく分けて電解ニッケルメッキと無電解ニッケルメッキの2つに分けられます。
名前もよく似ており、どちらも結果的にニッケル皮膜が付着するだけと思われがちですが、この2つは原理から特徴、用途まで異なるものです。
まずはこの2つのメッキの原理の違いからご説明します。
2.電解メッキと無電解メッキ
電解ニッケルメッキの原理
電解ニッケルメッキも無電解ニッケルメッキも、メッキ液内のニッケルイオンと電子の結びつきによってニッケル皮膜が生成されることは共通しています。
電解ニッケルメッキは、電極を用いて外部から電気を流して電子を供給します。
図のように、電極の陽極側にニッケル、陰極側に品物をつないでおき、電気を流すと、陽極側からはニッケルイオンが発生し、陰極側の電子と結びついて皮膜になります。
電気分解という化学の実験などでこの図と似たようなことをやった経験がある方もいらっしゃるかもしれません。
このときに陽極側では酸化、陰極側では還元という現象が起きています。
メッキの厚さは、流す電流やメッキ時間などで調整します。
当然、電気を流さなければ何も起こりません。
無電解ニッケルメッキの原理
無電解ニッケルメッキはその名の通り、電気の力を使いません。
メッキ液中に電解液という薬品が含まれていれば、品物を液に浸すだけでそれ自身が触媒となり、電子が発生します。
その電子とあらかじめメッキ液内に含まれているニッケルイオンが結びつき、皮膜が品物表面に析出します。
その後、皮膜からも電子が発生し、長く浸しておくほど皮膜は厚くなってゆきます。
このように電気を用いずに化学反応のみで還元を起こすことを化学的還元といいます。
また、品物自身が触媒となって電子を発生させるので、このような方式を自己触媒型と呼ぶこともあります。
メッキの厚さはメッキ時間で調整します。
電解メッキと無電解メッキの違い
電解ニッケルメッキと無電解ニッケルメッキの違いは、シンプルに言ってしまえば電気を使うか使わないかです。
しかし、そのことにより、性質にもさまざまな違いがあり、同じニッケルメッキとはいえ別物と考えた方が良いです。
例えば、無電解ニッケルメッキであれば、電気を通さないような金属以外の素材の品物にもメッキを行うことができます。
さらに、電解ニッケルメッキには電気が通りやすい箇所とそうでない箇所でメッキにムラができやすいですが、無電解ニッケルメッキにはその心配はありません。
また、皮膜の組成ですが、電解ニッケルメッキはニッケル(Ni)である一方、一般的な無電解ニッケルメッキは還元剤にリンが含まれる関係で、皮膜はニッケルとリンの化合物(Ni-P)となります。
同じ無電解ニッケルメッキでも、リンの含有率によっても特徴が変わります。
なお、無電解ニッケルメッキにはデメリットもあります。
高い温度で処理を行うため、熱に弱い素材の品物には向いていません。
また、メッキには時間がかかり、コストも上がってしまいます。
3.無電解ニッケルメッキの特徴と用途
均一性
ここからは無電解ニッケルメッキの特徴をご紹介します。
まずはとても大きな特徴として皮膜の均一性が挙げられます。
電解ニッケルメッキは電極を用いるため、電極からの位置によって素材への皮膜の付き方にムラが生じます。
品物が複雑な形状の場合、きちんとメッキされている箇所とそうでない箇所が出てしまうのです。
無電解ニッケルメッキは電極がないため、その影響は関係なく、どの箇所も均等に皮膜が付着します。
均一性はメッキ後の寸法精度などにも影響するため、とても大きなメリットと言えます。
耐食性
無電解ニッケルメッキの皮膜は緻密に構成されています。
したがって、素材に錆を発生させる因子をしっかりバリアすることができます。
ピンホールと言われる、ときおりメッキ皮膜に発生する穴の発生率も低く、総じて電解ニッケルメッキより耐食性が高いと言えます。
また、化学的な薬品に対する耐薬品性にも優れています。
無電解ニッケルメッキの耐食性については、こちらでも詳しくご紹介しています。
耐摩耗性
物と物が接触しているとき、動きに伴ってそれぞれの表面が消耗してしまうことを「摩耗する」と言います。
また、そのような摩耗が起こりにくい性質を耐摩耗性と言います。
一般に摩耗は表面が硬いと起こりにくいです。
皮膜のリンの含有率にもよりますが、無電解ニッケルメッキの皮膜は硬度が高く、耐摩耗性に優れています。
表面が柔らかく傷つきやすい素材で作った品物でも、無電解ニッケルメッキによって自動車や機械の摺動部(滑り動くような部分)にも適用することができます。
無電解ニッケルメッキの硬度や耐摩耗性については、こちらでも詳しく紹介しています。
その他の特徴
ここまで代表的な特徴をご紹介しましたが、無電解ニッケルメッキにはその他にもさまざまな特徴があります。
非磁性、はんだ付け性、導電性など、電子部品への適用に有利な特徴も多くあります。
なお、前にも少し触れましたが、皮膜のリンの含有率によっても特徴が異なりますので、詳しいところはご相談ください。
無電解ニッケルメッキの主な用途
ここまで挙げてきたさまざまな特徴によって、無電解ニッケルメッキは多くの分野で活躍しています。
主な用途は以下の通りです。
軸受などの機械部品(耐食性や耐摩耗性)
シリンダなどの自動車・船舶・航空機の部品(耐食性や耐摩耗性)
光学機器など精密機械の部品(均一性や耐食性)
電子部品(導電性やはんだ付け性)
化学部品(耐薬品性など)
4.弊社における無電解ニッケルメッキの対応
弊社 株式会社コネクションでも無電解ニッケルメッキに対応しております。
鉄、ステンレス、アルミニウム、銅・銅合金への処理実績があります。
また、処理可能サイズとして、アルミニウムですと500mm×405mm t86mmまで実績がございます。
他の材料やサイズでも対応可能な場合もありますので、お気軽にご相談ください。
半導体製造装置向け表面処理として無電解ニッケルメッキを施し、メッキ処理後精密洗浄(クリーンルームクラス1000)にて精密洗浄、梱包まで対応可能です。
さらに、
・製品の部分的なマスキング対応、研磨工程など対応可能。
・ネジやナット、その他の小物などジグに装着できない製品へもバレルメッキなどで対応可能。
といった弊社独自の利点もございますので、ご検討の際は是非ご相談ください。
お問い合わせ・ご相談はこちらまでお願い致します。
5.まとめ
無電解ニッケルメッキについて、電解ニッケルメッキとの違いも交えてご説明しました。
以下まとめです。
・電解ニッケルメッキと無電解ニッケルメッキは、原理も特徴も違う別の表面処理法である。
・無電解ニッケルメッキは電極の影響を受けないため、仮に複雑な形状のものでも均一にメッキできる。
・無電解ニッケルメッキは耐食性が高い。
・無電解ニッケルメッキは耐摩耗性も高く、機械の摺動部などへの適用も可能である。
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